こんにちは、東望大久保医院の大久保 仁です。
こう暑いと、ヘビも機嫌が悪くなるでしょう。 「ヤマカガシ」咬傷のニュースが出ていました。
日本には毒ヘビは3種類います。沖縄にいる毒性の強い「ハブ」、本土にいる時々噛まれて病院に来る「マムシ」、それと、一般に毒があるなんて知られていない「ヤマカガシ」です。ほとんど無名ですよね。
でも、血小板減少などの症状や出血、凝固異常の程度などは、実はヤマカガシの毒が単位量あたりの毒性は強いとも言われています。
ハブやマムシは毒牙が前にありますが、ヤマカガシは後牙類と言って毒腺が口の後ろにあり、ガブッと深く噛まないとなかなか毒は入りませんし、そもそもひどく臆病な習性ですので、一般にヤマカガシ咬傷はほとんど報告がないんです。
約20年前、北九州総合病院という病院に勤務していた時のことです。その時は、救急救命センターの外科医として勤務していました(私、職種が幅広いです)。50歳くらいの女性が、庭で蛇に手を噛まれたと言って受診されました。旦那さんが蛇の頭を鎌でちょん切り、体だけ、これだと言って持ってこられました。
症状は、出血が全く止まらず、蛇に噛まれた傷から出血していたのですが、止血のために縫合しても縫合孔から出血すると言った感じで、血液検査をすると血液の第1の止血担当である血小板の数がほとんどない、血尿も出て来るというやばさでした。その後、ものが二重に見える(神経毒症状)症状や、呼吸障害が出現してきました。
私は、その当時からマムシ咬傷などの蛇毒咬傷にめっぽう詳しく(当直などでたくさん当たりました)、ヤマカガシの症例経験はありませんでしたが、日本で唯一の蛇毒の研究所である、群馬県の日本蛇族研究所の堺 淳 先生をある研究会での質問をきっかけに存じており、その後、メールでひどいマムシ咬傷の時、アドバイスをいただいた経験があったので、早速、その首なし蛇の写真を撮って、堺先生に見てもらいました。
先生の返事は、中国産マムシもしくはヤマカガシの可能性もとのことでしたので、蛇族研究所からヤマカガシの血清を取り寄せ、投与したことがあります。
その時は、時間がものを言うと思ったので、群馬の蛇族研究所からの血清リレーで航空自衛隊のF15イーグルで北九州空港まで運び、そこから小倉南区の病院まで救急車で運んでいただきました。当時、インターネットで蛇の写真などの情報を専門施設に送り、自衛隊なども協力していただき医療連携すると言うことが珍しかったので、全国ニュースになりました。
最終的な診断は中国産マムシによる血小板減少症を併発した臓器不全症で、無事に救命することができました。マムシは、中国、韓国、日本などの東アジアに生息していますが、地域で遺伝子型が異なり、その毒の成分も異なることがわかっています。
何かの番組で、海外の街(例えば、アフリカの田舎町など)に頑張る日本人を芸能人が探し尋ねる番組を見たことがあります。「ヒアリ」の問題が記憶に新しいですが、このグローバル時代、いろんな生き物が、船や飛行機の貨物に紛れて、もしかしたら私たちのポケットにたまたま入って、日本に普通に来ているのだろうと思います。ただ、問題にならないと調べないだけだと思いますし、日本のマスコミの性質上、熱しやすく、冷めやすいだけだろうと思うのは私だけでしょうか?。
どうやら、我々自身が「自分の身は自分で守る」意志を持たねばならない時代になってきたように思います。