電子カルテとマンモグラフィー

 こんにちは、東望大久保医院の大久保 仁です。

 昨日、診療が終わってからマンモグラフィー、電子カルテなどの件である企業さんの営業所に行ってまいりました。帰りは雷、雨のひどいこと。

 乳がん検診でのエビデンス(臨床試験などに基づいた診療や治療の妥当性、証拠)では〜40歳以上の人にマンモグラフィを用いた対策型検診を行うことで乳がんの死亡率が低下(検診率は50%を超える)する〜というものです。

 視触診を行うこと、を乳がん検診に入れても乳がんの死亡率を下げることにはなりません(でも、長崎市でも諫早市でもまだ視触診は乳がん検診に入っています。福岡市の検診では今年から視触診は乳がん検診から省かれました)。超音波検査は日本で行われた十分に精度管理をなされた超音波検査診断であれば、40歳台の人対象という年齢限定で、マンモグラフィーよりもより早期での乳がんを見つけることができることが、J-STARTという臨床試験で証明できました。しかし、それが乳がんの死亡率を下げることができるか、についてはこれからも経過を見て見なければはっきり言えません。

 一方で、若年者(30歳〜40歳台など)に多い高濃度乳腺の人は、マンモグラフィでは雪原で白うさぎを探すようなものですから感度が明らかに落ちます。

 さらに日本人を含めた東アジアの人々は高濃度乳腺の割合が多いです。高濃度乳腺自体が乳がんのリスクとも言われています。

 欧米では乳がん検診を行なった際に高濃度乳腺だということがわかった際にはちゃんとその人に高濃度乳腺であり、乳がんのリスクファクターであることをきちんと告げることと最近なりました。しかし、本邦ではまだ、乳がん検診を受ける割合も先進国の中では低いですし、さらに、マスコミの対応もエビデンスに基づいた正しい報道をしているとは言い難く、高濃度乳腺であることを告げた方が良いかどうかについては現在、時期尚早となっています。

 昨日は、マンモグラフィーとその画像ファイリングシステム、電子カルテの連動についての説明を聞いてまいりました。

 高い画像診断技術にこだわりたい、長崎での乳がん検診の受診率アップに貢献したいと思っています。

 

 

家族

 こんにちは、東望大久保医院の大久保 仁です。

 お盆を挟み、しばらくご無沙汰になっていました。これまでに書く習慣がないとなかなかブログを続けるって難しいですね。

 私には家族がいます。当たり前っていや当たり前ですけど。長いこと医療に携わっているとその中には、「先生、私は天涯孤独の身ですから先生にお任せいたします」という方がけっこういました。その方々に手術する場合でも、やはりどなたか(患者さんが指名されるか、地元の民生委員など)にその説明をしなければなりません。

 血が繋がっていなくても、その方の人柄でそういった話がしやすい場合もありますし、本当に民生委員の方に事務的に話をしないといけなかったこともあります。民生委員の方、大変だなあと思います。

 はたまた、息子さんたちは東京や大阪に移り住んでしまい、自分の親が手術することになっても、多忙とのことで来なかった人たちもいました。なんとなくそんなケースが増えたように思いがするのは私だけでしょうか。家族の関係も希薄になっていっているような気がします。寂しい限りです。高齢化社会真っ只中でますますそういうことが増えていくとたまったものじゃないなあと思ったりします。

 今、自分があるのは親があり、妻があり、子供たちがいるからだなと感謝すべきだなと最近心から思います。

 

やりっぱなしの乳がん検診

 こんにちは、東望大久保医院東望大久保医院の大久保 仁です。大型台風が来る週末が心配です。

 「やりっぱなしの乳がん検診」と題をつけ、ちょっと敵を作るかな、とも思い躊躇しましたが、常々思っていることですのでそのまま書きました。

 がん検診で最も重要なことは、その検診をすることでがんの死亡率をちゃんと下げることができるとの科学的根拠を持っていること、さらに検診方法の精度管理がきちんとなされていることが重要です。さらに何と言っても、検診をするだけでなく、「精密検査が必要」とされた人が検診後の検査(より詳しい検査)に確実につなげるために、医療機関の連携が取れているのか?が非常に重要と思います。

 乳がん検診に関しては、特にマンモグラフィの読影能力、撮影装置・撮影技術に関しては精度管理が本邦では担保されていると思います。しかし、乳がん検診要精査となった後のマネージメントの均てん化については、甚だお粗末とだと思います。

 先日の乳がん学会でも、私の超音波ガイド下エンターベンションの担当で、色々教えていただいた静岡がんセンターの乳腺画像診断科の植松 孝悦先生もこのことについて発表されていました。「乳がん検診の精度管理を行うデータベースがない点で、欧米で行われている一般的な住民対象がん健診である組織型検診プログラムの定義から大きく外れており、早急な対策が必要」と。

 一般的に、乳がん検診では、現在のところ、乳がんの死亡率を下げるためには、「40歳以上の方にマンモグラフィを用いた検診を2年間隔で行うこと」とされています。ただし受診率を50%以上に上げることが条件です。 

 ピンクリボン運動などが盛んになってきたと言われ、乳がん検診受診率も伸びてきたと言われていますが、日本は先進国と言われる国の中でも最低で(20〜40%)、しかも市町村によってやり方が異なります。

 さらに、今やっているような「受けた方がいいですよ」的なキャンペーンでは、今後、乳がん健診受診率は伸びないと私は思っています。一般の人は「もし乳がんだと言われたらどうしよう。」と思えば、恐怖が先に立って受けてくれないのではないだろうかと思うのです。受けやすい環境を作ること、恐怖よりも、共感を持って乳がん検診を皆が受けようと思える、方策を工夫することが重要ではなかろうかと。

 検診率を上げるブレクスルー的な工夫、根拠に基づく検診についての教育的啓蒙活動を地道に行うこと、さらに精密検査が必要な人を次の検査に進めていくマネジメントを行うよう医療機関が連携していくこと、の3つをバランスよく行っていくことが、これからの乳がん検診に求められていると思います。