顔の見える病診連携は大切だよ。

 こんにちは。東望大久保医院の大久保 仁です。

 ある◯◯◯◯病院の消化器内科で胃がん検診を内視鏡検査で行なったそうです。「ヘリコバクター・ピロリ陽性、今後、治療をどこかでお願いします」、の紹介状を宛先なしで持って受診された男性の方がいらっしゃいました。

 治療先については「どこでもいいから」と言われたとのことですが、ヘリコバクター・ピロリ感染症の除菌適応についても内視鏡検査結果について具体的な所見がない(画像とか具体的な検査結果とか)と治療適応を考慮することはできませんし、治療に移ることも当然できません。

 薬だけの処方は医者であればできるでしょうが、治療効果判定やその後の経過観察のためには内視鏡検査なども含めた各種検査もその後、必要となる場合もあるでしょう。

 治療を担当する消化器病医としてはその内視鏡所見結果や、病理診断結果、感染症診断結果などの確固たる証拠がないと治療は行えません。

 医療行為は医師や医療関係者の連携が非常に重要ですし、医療従事者がお互いの専門分野や技量を知り、顔の見える医療が大切であろうと考えています。

 紹介をされた先生が、内視鏡診断結果を患者さんにどのように説明し、どの程度患者さんが理解されているか、治療を受けるにつき、患者さんと治療医お互いに話し合い、治療のメリット、デメリットや治療に際し生じ得る合併症につき共通認識を持って治療を行うことが医療には非常に重要です。

 よって、私は、検診の結果がきちんと同封されず、「どこでもいいから医療機関を受診してください。」ということで紹介先の名前の記載のない紹介状は原則的には、お受付しない方針としています。

 ただし、事情をお聞きし、紹介の先生が記載した内容、検査結果などがきちんと私に届けられた場合(もしくは将来、それが可能と予想できる場合)で、患者さんとその治療につき、話し合える条件ができるときには治療をお引き受けする場合もあります。

 面倒臭い、便利ではない、堅いことを、と思われる方もいるかと思いますが、医療は不確かなことが前提にあり、治療には必ずメリット・デメリットが存在する分野であることをご理解いただき、治療をなされる側に不利益が生じないように考慮することが重要と思います。

 また、「どこでも良いから受診するように」とお話しされる先生方におかれましても、ご自分が治療を担当される場合においてどうするかということも念頭に置き、上記のような紹介状を記載する場合には、患者さんに上記のことについてもお話された上、必要な検査結果について連絡する用意があることを記載していただければありがたいです。

 上記の患者さんには、以上のようなことをご説明をして、当院では現在、内視鏡検査を行えないことなどをご説明し、薬剤だけの処方はできないことをご説明し、お近くの消化器病治療をおそらく行なっているであろう医療機関(私が知っている限りにおいて特定の医療機関の名前を出しましたが、実際にその医療機関がその疾患に関してどのような治療を行なっているかは知りません。)にご自身でお電話していただき、「こういう紹介状を持っているが受診しても構わないか」、ということ話し「受診どうぞ」を確認してから受診された方がいいですよ、とアドバイスさせていただきました。

 めんどくさい、ですかね?