バルサン

 こんにちは、東望大久保医院の大久保 仁です。今日は梅雨らしい雨の日ですが、夕方に大量に降るようなことがニュースで伝えられています。空梅雨だったり、どかっと降ったり、何事も程度が問題ですね。

 このような季節柄、湿気てカビ生えたり、虫が多くなったりで、殺虫剤やカビハイターなどの使用機会も増えるのかもしれません、バルサンの煙をマスク越しに吸って、1日経過したが気分が悪いとの訴えの方がいらっしゃいました。現在の症状は軽度の頭痛、首回りモヤモヤ、時々咳き込むなどの程度で、今から仕事に行かないといけないんだが、なんとなく心配ということでした。

 もともと、殺虫剤?としては、世界にも冠たる日本人の発明と私、密かに思っています蚊取り線香が有名です。蚊取り線香は除虫菊という草花の成分を煙にして利用しており、独特の匂いが嫌いという方はいますが、人間くらいの大きいものにはそれほど無害、かつ、蚊などの昆虫には効果を発揮するという優れものです(毒性、安全性のバランスが良い)。

 それに比べ、バルサン、は煙で燻すタイプ、スプレータイプの殺虫剤です。対象がゴキブリなどになってきますとその殺虫力としての毒性は増しているのでしょう、調べてみるとメトキサジアゾン、フェノトリン、シフェノトリンという3種類の殺虫成分が混合されているようでした。

 僕はよく中毒症の患者さんに対して日本中毒情報センターのホームページを利用しています。それによると、症状として気分不良、頭痛、嘔気、嘔吐、咳等が見られますが、経口で大量摂取し、血中に移行すると意識障害なども出ますが、これは大量の場合、とのことでした。吸入については少量では、状態を見て経過観察、ですが、実際はどの程度吸入したかは吸入した人でもわからないでしょうし、気管支炎、肺炎の発症をチェックするべきとの記載がありました。経験的には以前、種類は異なりますが、塩素系消毒薬の吸入で亜急性の間質性肺炎などを生じた方がおられました。

 当院でも胸部レントゲン写真は取れます。しかし、この場合、その方は現在は何かの治療が必要というほどではなく、しかし、気分はよくないなどの症状があり不安であるとのことでしたし、お仕事の内容にもよりますが、やはり中毒での症状ありケースなので、少なくとも今日はお休みになった方が良いですし、その場合、職場にきちんと休む理由を記載する必要があります。

 中毒センターからの情報は絶対こうあらねばならない、というまではありませんが、そこに記載されていることは一般的なエビデンスと言えるものと考えます。それを患者さんにきちんとお話し、そこで行う検査はある程度の精度(それを診断する精度、確からしさも含めて)が必要であろうと思いますので、今回、呼吸器内科の先生にお任せいたしました(もちろん、お話を聞いただけですのでお代はいただきませんでした。)。