やりっぱなしの乳がん検診

 こんにちは、東望大久保医院東望大久保医院の大久保 仁です。大型台風が来る週末が心配です。

 「やりっぱなしの乳がん検診」と題をつけ、ちょっと敵を作るかな、とも思い躊躇しましたが、常々思っていることですのでそのまま書きました。

 がん検診で最も重要なことは、その検診をすることでがんの死亡率をちゃんと下げることができるとの科学的根拠を持っていること、さらに検診方法の精度管理がきちんとなされていることが重要です。さらに何と言っても、検診をするだけでなく、「精密検査が必要」とされた人が検診後の検査(より詳しい検査)に確実につなげるために、医療機関の連携が取れているのか?が非常に重要と思います。

 乳がん検診に関しては、特にマンモグラフィの読影能力、撮影装置・撮影技術に関しては精度管理が本邦では担保されていると思います。しかし、乳がん検診要精査となった後のマネージメントの均てん化については、甚だお粗末とだと思います。

 先日の乳がん学会でも、私の超音波ガイド下エンターベンションの担当で、色々教えていただいた静岡がんセンターの乳腺画像診断科の植松 孝悦先生もこのことについて発表されていました。「乳がん検診の精度管理を行うデータベースがない点で、欧米で行われている一般的な住民対象がん健診である組織型検診プログラムの定義から大きく外れており、早急な対策が必要」と。

 一般的に、乳がん検診では、現在のところ、乳がんの死亡率を下げるためには、「40歳以上の方にマンモグラフィを用いた検診を2年間隔で行うこと」とされています。ただし受診率を50%以上に上げることが条件です。 

 ピンクリボン運動などが盛んになってきたと言われ、乳がん検診受診率も伸びてきたと言われていますが、日本は先進国と言われる国の中でも最低で(20〜40%)、しかも市町村によってやり方が異なります。

 さらに、今やっているような「受けた方がいいですよ」的なキャンペーンでは、今後、乳がん健診受診率は伸びないと私は思っています。一般の人は「もし乳がんだと言われたらどうしよう。」と思えば、恐怖が先に立って受けてくれないのではないだろうかと思うのです。受けやすい環境を作ること、恐怖よりも、共感を持って乳がん検診を皆が受けようと思える、方策を工夫することが重要ではなかろうかと。

 検診率を上げるブレクスルー的な工夫、根拠に基づく検診についての教育的啓蒙活動を地道に行うこと、さらに精密検査が必要な人を次の検査に進めていくマネジメントを行うよう医療機関が連携していくこと、の3つをバランスよく行っていくことが、これからの乳がん検診に求められていると思います。