「がん」と告知されたとき

 大久保 仁です。医院の継承に関していろんなことが言えないため、しばらくブログをサボっていて申し訳ありません。

 気づいたら、2017年もあと10日ほどになっていました。

 みなさんは、「乳がん」と告知されたときにどんなことを考えましたか?

 あるいは、まだ、「乳がん」にかかったことがないみなさんなら、もし自分が「乳がん」になった時、そしてそれを告知されたときにどんなことを考えると思いますか?

「乳がん」と聞いた後の医師の言葉が全く耳に入らなかった、とりあえず家へ帰って家族に相談した、仲の良い友人に話を聞いてもらった、インターネットで調べてみた・・・などいろんな反応をお聞きしました。

 「乳がん」と告知された後で、絶望感と恐怖に怯えながらいろんな情報をかき集め、自分の中でああでもない、こうでもないと必死にお考えになられたことと思います。

 テレビや雑誌、インターネットで得られる情報は、残念ながら、目を引きやすく、ショッキングに煽り立てる情報が多く、必ずしも正しい情報ばかりとは限りませんし、どうしても営利目的を含む情報に偏りがちです。その結果、多くの患者さんが、不安な気持ちをとりあえず鎮めようとして大事なお金をサプリメントや健康器具、飲料水などに使っています。そういった代替医療なども、実際には健康に悪くないものもありますから、各個人がその良いところや悪いところを理解していれば我々医療関係者も完全に否定もできない場合もあります。

 しかし、問題なのは不安な気持ちのために、間違った情報を盲目的に信じてしまい、冷静な判断もできなくった結果、乳がんの標準的な治療を選ばず、科学的根拠が全くない一部の免疫療法、食事療法、温熱療法、民間療法に走ってしまい、治るはずの乳がんで命を落としたり、大事な治療開始までの時間を無駄に過ごしてしまったりする患者さんもたくさんいらっしゃることです。

 「がん」の治療をするにあたって、「正しい情報を得ること」は最も重要なことです。これは「乳がん」をはじめとする「がん」の治療に限ったことではなく、「高血圧症」や「糖尿病」などの生活習慣病と言われるものについても言えることだと思います。

 われわれ、医療従事者は、正しい乳がんの情報を患者さんに得てもらい、われわれと良く相談し、患者さん自身の考え方も含めたその人個人にあった治療の選択をしてもらい、最終的には、良い治療結果を得てほしいと願っています。

 私は、短い診療時間の中で、「話したことがうまく伝わったかな?」と思いながらも、後ろ髪をひかれる思いで、次の患者さんの診察にうつることがあります。

 患者さんは理解できているのだろうか?・・・。

 患者さんはわたしの説明で満足しているのだろうか?・・・。

 これまでの勤務医時代の25年間の中で、長崎、佐世保、佐賀、島原、小倉、尾道、伊万里、平戸といったいろんな場所で、患者さんや医療関係者に対して「乳がん」についての話や「胃がん」や「大腸がん」などの「消化器がん」についての話をさせていただきました。「今日の話はイマイチだったかな?」、「今日は上手く伝えられたかな?」などと終わった後に思うこと、反省することがありますが、それでも、まだまだ患者さんには伝えたりないと思ってきました。

 病気というものは、普段、健康なときは、自分はかからないものと思ってしまいます。しかし、かかりたくないと思っていてもかかってしまう人がいるのも事実です。かかってしまった後では、どうしても前向きに病気について学ぼうという気は起こりにくくなります。「病気のことは難しいから、話してもらっても自分はわからない」、と最初から尻込みされる方もいます。

 医師の中にも「そんな病気のこと、患者さんにいろいろ話してもわかるわけがない」と患者さんに病気の話をすること自体をあまり好ましく思わない人もいます。そうでしょうか?

 私は、それでも、患者さんがなんとか前向きな気持ちになって、病気の話を聞いてもらいたい、なんとか患者さんに聞いてもらえる話をすることができないかと考えてきました。

 そして、いつか、「乳がん」について(病気について)、前向きに、正しく、きちんと、あまり手間をかけずに学ぶことができる学校のようなものができないだろうか?と。

 そうした学校ができれば、乳がんについて、他人事だとあなどること無く、 必要以上に恐れることなく、もし、運悪く、「乳がん」になったとしても、勇気を持って、われわれ医療従事者と信頼関係を築いて一緒に戦っていけるのではないかと思っています。

 さあ、「スタート」、ですね。これから。